Canon EOS C200
コンパクトなシネマカメラで広がる画作り
信頼のAFと程良い重量がもたらす手ブレ感
ワンマン撮影時、カメラに期待することのひとつに、「信頼性」があるだろう。
ひとりで全てのことに対応するには限界がある。
そのため使用機材において重視する点は、例えば手にした時の馴染みの良さや一日使用しても疲労困憊しない重量感、撮影をサポートしてくれるAFなどが挙げられるだろう。
今回紹介するCanon のシネマカメラ「EOS C200」は、シネマカメラの中でも比較的コンパクトサイズで撮り回しの良いビデオカメラ。
「コンティニュアスAF」「顔検出AF」、手動で大まかにフォーカスを合わせた後、フォーカスエリアを自動調する「AFブーストMF」など、クリエイターを支えてくれるAF機能のバリエーションが充実している。
レビューを寄稿していただいた映像クリエイター・由井友彬氏は、「私のように一眼映像からキャリアをスタートしたクリエイターには、是非シネマカメラを手にとって色々試してみて欲しいと思う。一眼レフとは違った画作りの楽しさを再発見する事が出来るだろう」と語る。
一眼で映像の世界に飛び込むクリエイターが多くなってきた昨今だが、「別の表現に挑戦したい」と検討しているなら、ぜひ由井氏の作品とレビューを通して、シネマカメラという選択肢を増やしてみてほしい。
The last night
撮影シチュエーション
時期
- 2019年5月24日:ロケ撮影 10時~21時
- 2019年5月31日:リップシンクスタジオ 撮影 14時~19時頃
場所
- ロケ撮影:池尻大橋部屋スタジオ ・二子玉川河川敷・渋谷スクランブル交差点、
渋谷キャットストリート付近・車内(新宿繁華街付近) - リップシンク撮影:SIM STUDIO(お台場)
この状況で撮影した理由
当初ロケ撮影日にて全て撮影を終える予定だったが、時間やボリュームの関係上、リップシンクのシーンは別日に集中して撮り終えることとなった。
ロケ撮影は日光が部屋スタジオ内に入る午前中から始め、MV内の映像は実際とは逆の流れで撮り進めていった。
リップシンクのシーンは、日中スタジオ内で撮った後、日暮れとともに屋上スタジオに移動し、東京の夜景をバックに撮影を行った。
制作フローの紹介
EOS C200のセッティング
Canon C200
- Canon Cinema Raw Light
- 4K 60p(所により24p)
- ISO 800~3200
- F値:1.4~2.8
- シャッタースピード:基本的にはフレームレートの2倍に設定したが、リップシンクのシーンではパキパキとした質感が欲しかったため、通常よりもシャッタースピードを大幅にあげて撮影した。また、全編を通してTiffinのBlack Pro-Mist 1/8フィルターをレンズにつけて撮影を行なっている。
EOS C200以外に準備したもの
- フィルター:Tiffin Black Pro-Mist ⅛
- レンズ: Canon 24mm F1.4 / Canon 50mm F1.2 / Canon 100mm F2.8 / SIGMA 18-35 F1.8
リップシンク撮影時には、スタジオ内に任意のタイミングでスモークを炊き、画作りを行なった(2サビ部分など)。
撮影時に工夫したポイント
曲の雰囲気を映像に落としていくことはもちろんだが、悲しいシーンと明るいシーンの映像の雰囲気をしっかりと分けていく事には、特に注意して制作した。
また、当初はスタビライザーも使用予定だったが、よりリアルな手ブレ感を入れ込みたかったため、リップシンクのスタジオシーン以外、全て手持ち撮影を行なった。
EOS C200にハマるワケ

C200で撮影した素材は、サブカメラとして使用したCanon EOS Rの素材とも合わせやすく、全編を通して簡単なカラーグレーディングで自分の狙っている色を再現することができた。
また、コンパクトながらしっかりと安定感が出るようなサイズや重量のため、手持ち撮影からくる手ブレも心地よく、手持ち撮影だからこそ思った位置にカメラを向けることができた。
今回の撮影を通して改めて、C200の魅力を再発見することが出来た。
この価格帯で必要なものは全てカメラについており(内蔵NDフィルターなど、一回使うとその便利さの虜になる)、それに加えAFも付いている。
多くの映像カメラマンはMFを好んで使うと思うが、私のようにワンマンで撮影を行うクリエイターにとっては、AFが付いているだけで安心感が違う。今回の撮影でも、ほとんどはAFで撮影するが、CanonのAFはびっくりするほど正確で、特にリップシンク撮影の際には「顔限定AF」が大活躍してくれた。
C200は、私のようなクリエイターにとってBESTな選択肢だと、自信を持って言える。
今後EOS C200に期待すること
よりハイスピード撮影に対応、SSDでの収録、Prores撮影、シャドウに乗りやすいノイズの軽減など
Creater's Profile

Name:由井 友彬
東京生まれ、石川県金沢市育ち。
美容師を志して18歳の時に上京。美容関係の学校に通った後、3年間都内美容室に勤務。
その後、4年生大学に入学、哲学専攻。在学中、米・カリフォルニア州立大学モントレー・ベイ校に留学。同校にて、Cinematic Arts & Technologyを専攻。演出、制作、編集など映像制作の基礎を学ぶ。
留学中に日系大手旅行会社に売り込み、イメージビデオ制作の機会を得る。以降、映像作家としてのキャリアを築く。
2017年8月に帰国。現在は、東京を拠点にフリーランスの映像作家として活動中。