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Panasonic GH5S

MFTサイズセンサーを活かした望遠撮影

高解像度と高感度を両立したハイエンドミラーレス

ミラーレス機として、2018年1月25日の発売当時世界初の4K60P記録を可能にした「GH5S」。

スチル撮影で定評のあった「GH」シリーズを、動画撮影に特化したミラーレスカメラだ。
マイクロフォーサーズセンサーの性能をフルに活かして、高感度にも耐え得るノイズ性能をはじめ、4K60Pでの収録も可能に。
一眼動画撮影の一時代を築いた名機と言えるだろう。

今回レビューを依頼したSUMIZOON氏は、MFTならではのクロップファクターを利用し、超望遠で航空機撮影に臨んだ。

カメラももちろんだが、航空機撮影術を知り尽くしたSUMIZOON氏のこだわり抜いた作品をご覧いただこう。

Lights of the Nights

撮影シチュエーション

  • 時期:2019.3月~4月 全カット日没後に撮影
  • 場所:伊丹空港周辺

「夜の灯りに浮かび上がる航空機を美しく撮りたかった」というのもあるのですが、運航に関わる人々の「安全を願う気持ち」のようなものを表現するのに、夜の撮影がマッチすると考えました。
なお、タイトルの「Lights of the Nights」は航空機の灯り、空港の明かり、そして運航に関わる人々を「Lights」と言う単語に込めて付けています。

制作フローの紹介

GH5Sのセッティング

撮影に使用したレンズは下記の3本です。

  • ライカ DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2 ASPH./POWER O.I.S.
  • LEICA DG ELMARIT 200mm F2.8 POWER O.I.S.
  • SAMYANG 単焦点 レンズ 85mm F1.4 キヤノン EF用 + KIPON EF MFT AF(マウントアダプタ)F

一部手持ちで撮影しているカットもありますが、基本的に三脚固定撮影です。

三脚は、INNOREL RT90Cという安価ながら安定度の高いスチル用の三脚に、雲台はSachtlerのFSB6を搭載して撮影しています。

外部レコーダーを使って4K60p10bit収録をしていた時期もありますが、なるべく移動に負担がかからないように、最近では内部収録だけで撮影しています。

絞り値に関しては、レンズにもよりますが、航空機の明かりの部分に光芒を出すために、開放から少し絞った状態で撮影しています。
ISO感度は、200mmF2.8を使う際はISO6400を上限として、全てマニュアル露出で撮影しています。F1台のレンズではそこまでのISO感度は必要がないので、概ねISO1600までの設定で撮影を行いました。

使用したプロファイルは、V-Log LとCineLikeDの2つです。
以前までは、「カラグレ前提なので絶対にLogで撮る」という意識が強かったのですが、60pは内部収録で撮る機会が多く8Bitなので、CineLikeDのようなプロファイルを使って、本体内で絵作りをほぼ完結させてしまう方が映像のクオリティを上げやすいと感じています。
V-Log Lは、ハイライトとシャドーのレベル差が激しい状況や、シャドーの階調をより見せたい場合にのみ、4K30p 10Bit設定で使用しています。

60pのカットは、30pタイムラインに50%スローとして使用していますが、例えば航空機の真下からの撮影ですと過ぎ去るのが一瞬なので、尺的にもう少しゆっくり映像を見せたいという箇所に使用しています。
ここは4Kで倍の尺が稼げる「GH5Sの強み」だと思います。

撮影したデータは編集・カラーグレーディングともに、DaVinciResolve STUDIO 15 を使用しています。
以前はFCPX+DaVinciで、編集はFCPX、カラーグレーディングはDaVinciと使い分けをしていたのですが、DaVinciの編集機能が充実してきたこともあり、全てDaVinciだけで完結しています。
編集とグレーディングがシームレスにできるので、非常に効率的だと思います。
DaVinciResolve16では、カット編集に機能が充実しているようなのでこれから試していきたいと思っています。

カラーグレーディングに関しては、CineLikeDプロファイルの場合、コントラストの微調整と若干の色補正をする程度です。
V-Log L素材に関しても、コントラストを調整しつつ、カラーホイールをいじる程度で、特に凝ったグレーディングは行っていません。

GH5S以外に準備したもの

「Flightradar24」という飛行中の民間航空機の運行状況を示すカメラアプリと「エアバンド」です。
撮影や映像の確認に夢中になっていると、次に滑走路に進入してくる航空機を見逃します。
また、一部では進入が確認できないアングルからのカットがありますので、そういった意味では、次に何の機体が来るかという情報があると助かります。

撮影時に工夫したポイント

一般に「フレームレートの倍のシャッタースピードを設定するのが良い」と言われていますが、夜の空港では露出不足になる点と、航空機のフラッシュ状に点滅する衝突防止灯を綺麗に撮りたいという点から、30pでは1/30、60pでは1/60で撮影しています。
衝突防止灯は夜の航空機に花を添える大きなポイント。
ですが瞬間的に光る機体が多いため、180°のシャッターを切ってしまうと衝突防止灯が映らないカットが発生してしまいます。
また、フラッシュバンドな映りを極力避けるためにも、この設定で撮影しています。

なお、この撮り方は東日本ではフリッカーが発生する可能性があるので、西日本ならではの撮り方かもしれません。

また、空に雲が無い状態での天候ですと、空のシャドーに面白みが無いというのと黒に締まりが出すぎてしまうので、天候を見て撮影に臨みました。

GH5Sにハマるワケ

GH5Sのアップ

なんといっても、4K60pを圧倒的な高感度耐性で撮影できる点が魅力的。
4K民生用カメラは、未だに4K60pの実装が少ないですが、4K60pを使って夜の撮影でも安定した画質が得られるのが、このカメラの最大の利点だと思います。

GH5Sの製品発表を初めて聞いた時の話ですが、
「暗い中で被写体をダイナミックに撮りたい」、「夜の空港の飛行機に花を添える誘導灯を美しく撮りたい」と常々思っていた私には、願ったり叶ったりのカメラが出た!と興奮したものです。
もちろん、フルサイズ機やSuper35mmでも美しい映像を撮ることは可能ですが、マイクロフォーサーズセンサーを搭載したGH5Sは、実効焦点距離をフルサイズ機の倍に稼げます。
紹介させて頂いた映像では、パナライカ200mm f2.8やノクチクロン42.5mm f1.2を多用していますが、同じ画角、同じ露出を得ようとするととんでも高価な巨大レンズを使用せざるを得ません。
カメラとレンズ3本が小さなカメラバッグに入ることも、大きなメリットのひとつですね。

今後GH5Sに期待すること

とにかくGH5Sに関しては、画質面では文句の付けようがありません。
多くの方がおっしゃるように、ボディ内手ぶれ補正があるとRUN&GUNシューティングがしやすいので、そこは次の機種で期待しています。
ほとんどのケースでは、レンズ側の手ぶれ補正で事足ります。
ですが、GH5のDual ISを一度体験すると、三脚の必要性すら疑うほどよく止まります。
「GH5Sの画質でラフに手持ち撮影をしたい」というのは贅沢かもしれませんが、ぜひボディ内手振れ補正の実装を望みます。

Creater's Profile

SUMIZOONさんの肖像

Name : SUMIZOON

ビデオグラファー。
YouTubeチャンネル「STUDIO SUMIZOON」は、登録者数10000人を目前に控えている。
ブログ:「とあるビデオグラファーの備忘録的ブログ
Facebookフォーラム「一眼動画部」を運営。